大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)12号 決定

本件抗告理由は、本件不動産については、抗告人(債権者)と債務者兼所有者ら先代風間綾子との間に本件競売の基本たる抵当権設定契約とともに、右抵当権により担保せられる債務を期限に弁済しないときは代物弁済として所有権を移転すべき旨の契約がなされていたのであるが、右風間綾子が債務を弁済しなかつたので、抗告人は昭和二十五年三月四日付五日相手方到達の書面で右代物弁済による所有権取得の意思表示をした、ところが代物弁済の効力を争うので訴訟となり目下東京地方裁判所昭和二十五年(ワ)第七七七一号として事件が係属している、抗告人はその後に本件抵当権の実行を申し立てたところ、原裁判所は始め右申立により競売開始決定をなしたにかかわらず後に至り右代物弁済に関する事情が判明したことを理由に競売開始決定を取り消し、競売申立を却下する旨の決定をした、しかし抗告人は代物弁済による所有権取得の主張を固執する意思なく、本件競売の申立に際し前記代物弁済により所有権を取得しうべき権利を放棄する旨の書面を裁判所に提出したので、前記訴訟は維持できず、競売手続を進行するつもりであるから原決定の取消をもとめる、というにある。

しかしながら、記録によると、本件抵当権実行の申立をしたのは昭和三十年十二月二十三日であり(記録一丁)、代物弁済予約上の権利を行使したのは、昭和二十五年十二月五日である(記録一四八丁)から、後者がなんらかの理由によつて無効であるか、または事後に効力が消滅したことが法律上明確にならない限り、抵当権の実行の申立は不適法となさざるを得ない。けだし、もし、代物弁済が有効であれば抵当債権は消滅して競売申立の基本が存立しないことになるからである。

抗告人が競売の申立と同時に、申立書中「申立ノ原因」と題する部分第二項の記載によつて、代物弁済に関する権利を放棄する旨を表明し、なおその旨の上申書を提出したことは本件記録(第二、四丁)に徴し明かであり、かりにこれをもつて放棄の意思表示と認めるとしても、すでにその前になされた代物弁済予約による権利の行使が有効なかぎり全く無意味である。もとよりこれによつてさきの権利行使の効果を消滅させることはできない。

代物弁済予約上の権利行使の効果について争があり、それについて民事訴訟係属中であることは、抗告人も自認するところであるけれども、それが無効なこと、もしくは効力消滅したことを認めるべき資料はない。以上のような事情のもとでは、本件競売申立はその根拠がないものとしてこれを却下すべきもので、したがつて、競売開始決定は違法であつたことになり、これを取り消すべきものである。ただし、将来前記訴訟によつて、代物弁済の効力が終局的に否定された場合には、さらに競売申立をすることができることにもなろう。

(藤江 谷口 浅沼)

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